【池田コラム】『心・技・体』2017年11月

  • 2017.11.08

子どもたちにとって一大イベントである運動会。その中でも花形種目といえば、プログラムのラストを飾る“選抜リレー”ではないでしょうか。全校生徒が見守る中、トラックを駆け抜ける選手たち。自分のチームの選手が1位でゴールテープを切った瞬間、言葉では言い表せない喜びが体中を駆け巡ります。と、こんなことを書いている私ですが、小学生の頃、リレーの選手になれたことは一度もありませんでした。走ればいつもビリ争い。走ることに限らず、逆上がりもできなければ、マット運動では突き出たお腹の肉が邪魔をして、後転をしても明後日の方向にいってしまう…そんな子でした。「リレーの選手なんて、夢のまた夢。自分には無縁の世界だな~」と思っていました。

そんな私に転機が訪れました。小学校4年生のときに父親が連れて行ってくれた横浜スタジアム。初めて観戦したプロ野球に魅了され、少年野球を始めました。当時の私はいわゆる“ぽっちゃり体形”。ベルトを締めると、その上にお腹の肉が乗ってしまいます。入団時にコーチの言ったセリフは、「最初はキャッチャーから始めようか」でした。当時は、“体が大きくて鈍足=キャッチャー”と考えてしまう傾向がありました。全員でランニングをするときは、キャッチャーの防具をつけて走っていました。必死に頑張っても、前を走っている仲間になかなか追いつけない、そんな状態が半年続きました。それでも、手を抜いたことはありませんでした。なぜなら、監督から「自分がどうすれば成長するかを意識しろ」といつも言われていたからです。だからこそ、「前の自分よりタイムが早くなっているか」ということを、常に意識するようにしていました。入部してから1年が過ぎた夏。練習は相変わらず苦しいものでしたが、この頃になると徐々に嬉しさを感じるようになってきました。頑張り続けたことによって少しずつ持久力がつき、体つきにも変化が出てきたのです。ランニングでは前を走っていた子に追いつくようになり、次第に順位も上がっていきました。そうすると練習がより楽しくなり、できる→もっと頑張りたい→やってみる→できる、といういいサイクルになりました。5年生になるとフットワークも軽くなり、三塁手に抜擢され、ついにレギュラーを勝ち取ることができました。6年生のリーグ戦では、全チームの中で3位の打率、盗塁数でもチーム2位という好記録を残しました。手を抜かず、そして諦めずに自分の力をつけていったからこそ、このような結果が得られたのだと思っています。

花まるの授業でも「自分との戦い」があります。特にそれが表れるのは「サボテン(基礎計算教材)」です。5月に行った3年生の“あまりのあるわり算”で、子どもたちは大苦戦。今までは解説を聞けば、初見でも計算方法を理解し、ある程度の問題数が解けていた3年生の面々も、数問解くのがやっとという状況でした。
数日経ってお母様方に宿題の進捗を確認すると、「1問解くのに時間がかかるので焦りから慌ててしまいます」「すっかり苦手意識がついてしまっています」というお話を伺いました。3年生の彼らにとって、今が鍛えるべきチャンスの時期だな!と思いました。私は教室で、いつも以上に「前の自分より1問でも多く解けるように!」ということを強く伝えました。
子どもたちに変化が見られるようになってきたのは3週目。「前の日より1問でも多く解く!と言いながらトライしています!」「数日前から、3分以内でできるようになり、今日は2分を切ることができました!!」という嬉しい報告がいくつか寄せられました。ある男の子は初めて2分49秒のタイムを出したとき、「絶対3分以内に解くって、諦めなかったんだよ!」と言っていました。これは、子どもたちが苦しみながらも自分自身と向き合い続けたからこそ得られた成功体験です。順調に物事が運ぶときよりも苦しい段階からスタートしたときの方が得るものは大きいものです。

“成長”というものは、何もないところからは生まれません。積み重ねた経験が土台となっているのです。そしてそれは、ただ積み重ねればいいというものではなく、その根底に「できる・やりきる・手を抜かない」という本人の意志が必要です。スポーツの世界でよく言われる「心・技・体」という言葉がありますが、私は「心」がなければ「技」も「体」もついてこないと思っています。子どもたちが「今度はできるようにしたい!」「もっとやりたい!」「楽しい!」と思える環境づくりをすることこそが、私たち大人の役目です。
ちなみに、高校生になった私は、初めてリレーの選手に選ばれ、小さな夢を一つ叶えたのでした。

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